「スタンフォードの自分を変える教室」を解説 ~意志力を鍛え行動をコントロールする~

教養

こんにちは。えっくすはっかーです。
今回は2013年にベストセラーとなった「スタンフォードの自分を変える教室」(著者:ケリー・マクゴニガル)をズバッと説明します。

スタンフォードの自分を変える教室 スタンフォード シリーズ

ブログタイトルにした通り、本気で人生を変えるパワーを持った本だと思います。

「ダイエット中なのについついチョコレートをパクついてしまう・・・」
「面倒な仕事をついつい後回しにしてしまう・・・」
「勉強を先延ばしにしていつも一夜漬けになってしまう・・・」

そんなあなたは是非読んでみてください。
少し長いですが、読むと視界がパッと開けるかもしれません。

超まとめ

心に決めたことを成し遂げる「意志力」。その邪魔をする、本能、ストレス、疲労、欲求、楽観的な未来予測、ごほうび、諦め、に対する科学的な知識を身に付け、自分自身への思いやりと科学的な目をもったポジティブインフルエンサーになろう。

3種類の意志力「やる力」「やらない力」「望む力」

まずはじめに、今回の内容で最も大事な「意志力」について整理しておきましょう。意志力を持って取り組むチャレンジには、3つの種類があります。

「やる力」のチャレンジ

生活の質を改善・向上するために実行したいこと
運動や学習など。

「やらない力」のチャレンジ

健康を害し、幸福や成功の邪魔になるものをやめること
禁煙、禁酒など。

「望む力」のチャレンジ

最も重要で長期的な目標
人生における目標や仕事においての目標など。

これらのチャレンジはいずれも取り組めば人生が改善することは間違いなし。

・・・でもどうしてもできない。。。。

その原因を科学的な視点で探っていきましょう。

阻害要因を科学的視点で見つめる

意志力による行動を妨げるものには、いくつかの種類があります。
それらを科学的な知見をもとに見ていきましょう。
イメージしていたものと違うかもしれませんが、いずれもデータから導かれる事実です。

少し長くなりますので「とにかく解決策が知りたい」という方はこのパートはまるっと飛ばしてしまってもOKです。

意志力の阻害要因①:本能

かつてアフリカのサバンナに生きていた時代、ヒトはいろいろな危険と隣り合わせでした。
サーベルタイガーに出くわしたら、「余計なことは考えなくていいから、逃げ出すことに全エネルギーを集中せよ」という命令が全身に駆け巡ります。
これを「闘争・逃走反応」と呼びます。

似たような反応が、意志力を阻害する要因として働くことがあります。

例えば生クリームたっぷりのショートケーキを見たとき。
本能は「今すぐそのケーキをゲットせよ!」と働きかけてくる上に、大量の糖分摂取に備えて血糖値を下げ始めます。そうなったらもう、我慢することは至難の業です。

「闘争・逃走反応」に対抗するには、衝動的に動く前に考える「休止・計画反応」が重要になります

意志力の阻害要因②:ストレスと疲労

こちらは多くの方のイメージ通りかもしれません。ストレスが溜まっていたり、疲労が蓄積されていたりすると意志力が低下します。
意志力が低下していると、無意識のうちに欲求に負けちゃったりするので、ストレスと疲労は天敵!

意志力の阻害要因③:欲求・欲望

ドーパミンは強力な欲求・欲望を引き起こす脳内化学物質です。
食料を手に入れたい、魅力的な異性と関係を持ちたい、といった気持ちはドーパミンの影響によるもので、この力によってヒトは今まで生き延びてきたと言えます。

また、欲求や欲望がなくなった状態をイメージしてみればわかるように、ドーパミンは現代のヒトにとっても重要です。
ドーパミンがなくなってしまえば無気力、無感動な状態になってしまいます。

しかし、ドーパミンについて注意しなければならないことがあります。
それは、ドーパミンは欲求はもたらすが、幸福感はもたらさないということ。

目の前にケーキがあったとき、それを食べたい、と思わせるのがドーパミン。
実際に食べて幸福を感じるのはまた別の仕組みなのです。

ドーパミンに負けてケーキを食べてしまったとき、幸福を感じるどころか自分に失望してうんざりしてしまうかもしれません。

意志力の阻害要因④:遅延による報酬の価値割引と楽観的な未来予測

次は、時間が意志力に与える問題。大きく2つあります。

1つめは、遅延による報酬の価値割引

1つ実験結果があります。

おやつは、誰しも欲しいと思うものです(本能的な意味でも)。
そのおやつを、2つ今すぐにもらえる場合と、2分後に6つのおやつがもらえる場合とだと、当然2分後に6つもらった方が得なのですが、なんと2分待てた人は19%だけ。
72%が待てた、チンパンジーにすら劣る結果になったのです。

多くの人間は、2分後の6つのおやつの価値は、今すぐに手に入る2つのおやつの価値に劣ると判断したことになります。

未来に手に入る報酬は、今すぐに手に入る報酬よりも価値が劣る。これが遅延による価値割引です。

「今すぐに手に入る」というのが重要ですので、見えないようにする、手の届かないところに置く、という単純な方法で軽減可能です。

2つめは、楽観的な未来予測
人は、未来の自分は理想的にふるまうことができる、と考えてしまうようです。
未来の自分は、やるべきことには全力で取り組むし、人助けもするし、遅延による価値割引にも負けないと。しかし今の自分について聞かれるとそうではない。

このために、「明日からちゃんと勉強しよう」「明日からダイエット」「面倒な仕事は明日にしよう」→「明日の自分はちゃんとやるから」という判断をしてしまいます。

実際に明日が来た時、そこにいるのは前日と同じ自分。また先延ばしにしてしまうのがオチです。

明日は今日の延長であると意識することが重要です。

意志力の阻害要因⑤:ごほうびと諦め

「昨日いっぱい我慢したから、今日は少しおやつを食べよう」「昨日は勉強をしたから、今日は遊ぼう」というような、少し意志力を発揮した後の場合、ごほうびとして普通よりも余分に意志に反する行動を取ってしまいがちです。
そして、「1口ケーキを食べてしまったんだから、もういっそ今日はいっぱい食べてしまおう」という諦め
これらも科学的に確認できている事実です。

この2つが手を組んでやってきたら、なかなか太刀打ちできません。

意志力の阻害要因⑥:死のイメージの影響(恐怖管理理論)

ニュースを見ていると、殺人事件や災害、病気など、死を連想するものもたくさんあります。そして、死を連想するたびに脳はパニックを起こしているというのです。

無意識下にですが、パニックを起こした脳は不安を感じ無気力になります。それを解消するために登場するのが、そう、ドーパミンです。

死を連想したとき、ドーパミンのせいで私たちは購買意欲が高まり、甘いものが食べたくなり、たばこを吸いたくなります。

意志力を高めるワザ

ここまで、意志力を阻害する要因について、これでもかとたくさん書いてきました。
しかし、絶望する必要はありません。

ここまで説明したのは、意志を貫くことができないのは気持ちや根性の問題ではなく、生理的な作用によるものだ、ということを理解するためです。

意志が打ち砕かれ、誘惑に負けてしまったとき、自分の根性のせいにせず、正しく対処できるようになりましょう。

ここからは、意志力を鍛え、実行する力をつける方法について解説します。

意志力up①:自己認識力を取り戻す ~ストレスと疲労をなくし、瞑想をする~

意志力を高めるには、まずは自己認識を正しくするところから。
自己認識ができていないと、誘惑に駆られていることに気づくことすらできないかもしれません。

適度な運動睡眠でストレス・疲労をなくし、ゆったりとした呼吸(1分間に4~6回)で自己認識の力を高めることができます。
5分~15分自分の呼吸に意識を集中する瞑想も、さまざまな誘惑から自分自身を目標に引き戻すトレーニングに有効です。

意志力up②:意志力は筋肉のように鍛えられる ~意志力マッチョを目指す~

意志力は筋力と同じように、使い続けると疲弊し、1日中誘惑にさらされていると、夜にはもう疲れ切った意志力は使い物にならなくなっているかもしれません。

しかし、意志力は筋肉のように鍛えて強くすることもできます

意志力を発揮し続けるために、しっかり鍛えて意志力マッチョを目指しましょう。

要領は筋トレと同じ。筋肉を使う回数を増やして負荷をかけるように、意志力が必要なことをする回数を増やすことです。

ドアを開けるときに聞き手と逆の手にする、汚い言葉を使わないようにする、1日5分の瞑想をするなど、ハードルの高くない選択をすることで、行動前に考えることが習慣化し、意志力を鍛えることができます

意志力up③:感情の波に抗わず、乗りこなす ~ありのままを受け止める~

この章の冒頭に書いたように、誘惑に負けるのは根性の問題ではなく、そういう生理反応になっているからです。ドーパミンによる誘惑を受けているときは、無理にそれに抗うのではなく、自分自身を深く観察しましょう。
欲求に駆られることは自然なことで、ダメなことではないのです。

このように感情をそのまま受け入れることが、意志を通すコツです。
罪悪感を抱くよりも自分を許す方が責任感が増し、行動をコントロールすることに繋がります

無理に押さえつけると必ず反動がきます。

意志力up④:自分の未来をイメージする

意志力を持って達成し、理想的な状態になった未来の自分。
誘惑に駆られて失敗し苦しんでいる未来の自分。

どちらをイメージしても、今の行動を変えるエネルギーになります。
未来の自分をできるだけ鮮明にイメージし、今の自分の行動につなげましょう

意志力up⑤:「やらない力」の限界 ~「やらない力」は「やる力」に変換する~

「シロクマについて考えないでください」と言われるとシロクマが頭から離れなくなってしまうように、「やらない」というのは非常に難しいことです。

例えば、「甘いものを食べない」という目標を持った時、頭の中では「甘いものは食べない、甘いものは食べない、、、」と思い続けているわけですから、常にドーパミンによる欲求とストレスにさらされることになります。
そうなるともう欲求に負けてしまうのは火を見るより明らかですよね。

そんなことにならないように、そういうときは「(甘いもののかわりに)ナッツをおやつにする」と思うようにすればいいのです。そうすると「甘いもの」が頭の中からいなくなり、ドーパミンによる欲求からも、それを我慢し続けるストレスからも解放されます。

「やらない」目標を持った場合、何らかの「やる」目標に変換して意識すると、成功確率が格段に上がります。

意志力up⑥:意志力の波及効果 ~肥満は伝染する~

「肥満は伝染する」というと、おおよそ科学的でない都市伝説のように聞こえるかもしれません。しかし、ヒトには集団生活を送るためにミラーニューロンというものが発達していて、その働きにより、身近な人の動きを感じ、真似て、自分のものと同じように感情を抱くことができます。

例えば、隣で料理をしている人が指を切ってしまった場合、自分の指を切ったのと同じようにリアルに「痛そう!」と思いますよね。

このような働きにより、身近に太るような生活を送っている人がいれば自分も太ってしまう確率が高くなります。

しかし朗報です。これはネガティブな内容だけではありません

意志力を持って行動している人の近くにいれば、自分自身もそのように行動できる可能性が高くなります。
人は、「よいことをしたい」という気持ちより「みんなと同じでいたい」という気持ちの方を強くもっています。

よく、環境を変えれば行動が変わる、と言われるのはこのことかもしれません。

まとめ ~自分の感情を受け止め、行動をコントロールしてポジティブインフルエンサーになる~

今回、非常に長い文章になってしまいました。
改めてまとめると、下記のようにできると最高ですね!

・誘惑に負けてしまうのは自分のせいではなく生理的な反応のせい
・誘惑に負けそうになったり、衝動に駆られたりしたら、自分の感情を観察する
・感情と行動を切り離し、未来を描いて行動をコントロールする
・実行する人、を体現し続け、ポジティブな伝染を引き起こす

本にはもっとたくさんの実験と、もっとたくさんの有益な情報が詰まっています。
よかったら是非一度読んでみてください。

コメント

  1. […] しまいます(シロクマの実験についてはこちら 「スタンフォードの自分を変える教室」を解説 ~意志力を鍛え行動をコントロールする~) ポジティブになるために、この力を使わない […]

  2. […] 今までにご紹介した「自分を変える教室」でもあったように、かつて役に立っていた本能でも今の時代にそぐわないものがあります。 […]

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